心のアウトレットモール

文字起こしをすることで無理やり満足するためのチラシの裏。とは言ったものの、間違っていることはぜひ正したいので、これはさすがにと思ったら突っ込んでほしい。

チリン、とグラスのぶつかる音が鳴る。

薄暗く、また内装にそれと思わしき意匠や品物は一切ない。ただ一つだけ置かれたカウンターと、その上にわずかに並ぶ果実酒だけがこの場所を語る。

彼方には若い女がいる。華やかな色の酒を湛えるグラスを手に、無限に深い瞳で正面の男を見つめている。

此方には男がいる。第一印象こそ若く見えるが、顔にはやつれが見え、あと数年もすれば齢に不相応な老獪な表情を操ることになるだろう。女と同じ酒の注がれたグラスこそ手に持っているが、それを見つめるばかりで口を付ける素振りはない。

「最近、自分の中に自分じゃない誰かがいる事に気づいたんだ」

男は自ずから口を開いた。最初からそのつもりだったようだ。男が言葉を紡ぎ終わるなり、女は瞳を閉じた。

 

幾許かたった頃、女は重い瞼を開いた。手元のグラスは、さほど時間は経っていないことを教えてくれた。

「あなたは主格。こんなところで油を売っていちゃ、いけないんじゃないの?」

突き放すような言葉だ。それと歩調を合わせるように、女の瞳は浅く、それ故に強い眼光を男に向けている。男は視線に気づき、強めに返した。

「命あっての物種だ。」

女は頭が痛そうな振りを見せたあと、男に酒を飲むようすすめた。男は一切応じなかった。女はたいそう不満げな表情を見せ、答えた。

「あなたは虚弱。もう少し程度を下げても、いいんじゃないの?」

「だったらなんで」

男の言葉は途中で遮られた。背後から口を抑えられ、後ろ手に拘束される。女はその光景に軽い溜め息をついた後、壁にかけられていた服に着替えながら口を開く。

「そういえばあそこ、駅から歩けるところのパティシエ。何分かかるんだっけ?」

「30分くらいだって。」

「この夏場に…?マカロンの為じゃなかったら今頃激おこだよ?」